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52間の縁側

“僕は、背骨になるようなものをつくりたい” 建築家 山﨑健太郎さんインタビュー(前編) #52間の縁側


福祉施設”52間の縁側”ができるまでに密着するironna(イロンナ)メディア。
今回は、設計をされた山﨑健太郎さんにお話を伺います。
プロジェクト発起人の石井さんによると「どこまでも”人”を大切にして建物を作る」建築家。メンバーの考えをどう感じ、どう考えて設計をされたのでしょうか。
後編はこちら

★プロジェクト「52間の縁側」とは?

「52間の縁側(ごじゅうにけんのえんがわ)」は、「第3のいしいさん家」とNPO法人わっかがタッグを組んで始まった、「高齢者・障害をもつ人・生きづらさを抱える人・ファミリー・みんなの居場所」を作るプロジェクト。


介護施設としてデイサービス、日中一時支援をするほか、子どもの遊び場、共助カフェ、障害や生きづらさを抱える人の就職支援など「取りこぼしのない支援」を目指す施設です。


名前は「52間=94m」(1間は1.818m)におよぶ長い縁側の設計から。
プロジェクトについてさらに読む>

52間の縁側の模型。


※前の記事(アトリエ「ティエラ アスール」見学)のあとの取材となります。
アトリエの久本さんが原っぱとレジャーシートを貸してくださり、昼下がりの太陽の下、最高のロケーションでのインタビューが始まりました!

山﨑健太郎(やまざき・けんたろう)
建築家/山﨑健太郎デザインワークショップ代表取締役。
工学院大・東京理科大・早稲田大 非常勤講師、明治大・法政大 兼任講師
「52間の縁側」ではSD Review 2016 入選。ほかたくさんの建築で受賞歴あり。
http://ykdw.org/

思いを持った人の佇まいが、建物にそのまま現れる


−“変わった不動産屋さん”の宮本さんから、「こんな個性的な案件はこの人がぴったりだ!」と山﨑さんにラブコールがあった訳ですが、そんなに「人」や「暮らし」を大切にするようになったのはどうしてですか?

「沖縄の“糸満漁民食堂(いとまん ぎょみんしょくどう)”の設計に携わったときからです。「石積みワークショップ」といって、地域で伝統的に伝わる石積みの工法を再現して、みんなで石を積んだんです。

写真引用:山﨑健太郎デザインワークショップ
http://ykdw.org/works/itoman-gyomin-shokudo/


それがとても、美しかった。それまでもいい建築を作りたいと思っていたんだけど、形がかっこいいとかフォトジェニックなものに惹かれなくなってきて…もっとグッとくるもの。建築はそっちの方がいいんじゃないかと思いました。」


決まったゴールに向かって建築を作るのには限界がある


「自分がイメージできるものには限界があります。なぜって、建築って一度作ると100年残ってしまう。100年先なんてイメージできないですよね。最終的に図面に線を引いたり、材料を選ぶのは僕だけど、僕らが今できる想像なんてたかが知れている

それよりも、そもそも想定しない方がいいかなと。こうしていしいさんがいて宅老所をしていて、そこに亜佳音さんが地域の繋がりを持って誰かを連れてきて。年々どうなっていくかなんて、それは想像できないししない方が面白いなって。」

健太郎さんといしいさん


想像ができない中での「建築の役割」


「でも、何も建築がしないということはいかないので、“何か”最初の大きなもの、背骨みたいなものを示すのが役割だと思いたい。背骨がないと、内臓をつけたり服を着せたりはできないから。だから僕は、石井さんたちのやろうとしているものの背骨をつくりたいと思ってます。」


−背骨ですか。


「この背骨は…今は言葉にはできないです。建築ができたそのあとに、だんだんわかっていく感じかもしれない。展覧会や賞なんかで、いろんなメディアで取材を受けてなんとなく説明はしていますが、目指そうとしているものを見たことがないから本当は説明できないんですよね。



でも、きちんとその人のやりたいことを知って、しかるべき方向に背中を押してあげないと全部”普通”のものになっちゃう。意思に沿ったものがそろったときに初めて、そちら方向に気持ちが膨らむ。中身ありきで、やりたいことがはじめにあったほうがいいですね。」

不安になって顔が見たくなる


「普段は事務所で仕事していますけど、不安になってくるんですよ。今自分たちの設計しているものが、みんなの思いを引き受けられるようになっているのか、どうしておこうか…難しいなって。

そこで不安になって、石井さんたちの顔を見たくなる。今日は何か用があったわけじゃなくて、顔が見たくなったから来たんです(笑)」


−来てみていかがですか。

「来たら海が更に広がってて、いしいさんたちが漂ってました(笑)でも、なんかやってくれそうだから、対応できるように建物内はスカスカさせてます。こんな仕事、今までしたことがない

(一同笑)

イメージの言語化はしないほうがいい


健太郎「まあ、石井さんちのコンセプトなんて今は”ごちゃまぜ “くらいとしか言えないですよね。よくわかんない(笑)」


石井「肌で感じないとわかんないよね。」


亜佳音「私の中では、頭の中に登場人物がみんないるんですよ。顔が浮かんでいて、事務書類なんかで説明文を作る時、その人たちを組み入れて書いてる。」



健太郎「面白いね!僕はこれから使う人たちと会っているわけじゃないから、石井さんみなさん頼みますよ、という気持ち。」


亜佳音「頭の中を映像で映し出せたらいいのに。」


健太郎「でも、むしろ言語化しない方が良かったりします。建築が雄弁に“ここはこう使うもの” “ここは危ないところ”なんて喋りだしちゃったらダメなの。なんとなくここ、こういう感じになってきたね〜というのがいいと僕は思う。


さっきのアトリエ(前記事で見学した場所)はまさにそういう感じでした。あそこに入った瞬間、“ここは自由でいいんだ!”と僕は思っちゃう。ペンキが多少とんでも怒られないし、“自由にものを作る場所だよ”とあそこは教えてくれる。

アトリエ ティエラ アスールの一角。


他のだれがやってもああはならないし、どうしてそうなっているかなんて説明できなくて。カッターマットや材料がたくさん並んでいるから?画集がいっぱいあるから?そういう感じでもなく、説明できない、非言語のコミュニケーション。」


石井「それがいいんだと思う。職人って白黒してないじゃない。”いい塩梅”とか”潮時”とかって感覚を大事にする感じ。」


健太郎「制度があったりで決まったものに向かって設計する場合もあるけど、今回は“確かじゃないもの”に向かってやっていますね。“人”とか“雰囲気”とか。“状況”とか。使う人に主体性がある



今って、冬は寒くならないように、壁は汚れないように、尚且つコストも安く、って全部建築に求められてしまう。建築が全部先回りしたりすると石井さんのいう“塩梅”がなくなってしまって。」


亜佳音「そこは使う側で工夫していきたいね。」


石井「ブリコラージュで。」

※ブリコラージュ:手に入るものを寄せ集め、試行錯誤しながら新しい物を作ること。

やりたいことに応じて、家主がカスタマイズしていく


健太郎「だから、僕は石井さんには”この程度にしかやってないよ”と説明しています。全部はやってないよ、悪いけど石井さんここは工夫してね!って。」


石井「僕も相手に合わせた姿勢でこちらから行かないから、適当だな〜、仕事してないんじゃないか?と言われたりするんだけど、その感覚に似ているかもね。黒子であり、受け身な感じ。」


−いる人たちが自分で考えて使え、そこならではの「空間」ができあがるのを建築で後押しする健太郎さん。石井さんの考え方と通じるものがあるのですね。

後半では、いよいよ健太郎さんが設計に反映させた「背骨」の部分と、一同がびっくりした「52間の縁側」の演出をご紹介します。

後編を読む>
“僕は、背骨になるようなものをつくりたい” 建築家 山﨑健太郎さんインタビュー(後編) #52間の縁側
https://ironna.org/engawa/kentarosan-interview2/




編集後期


取材・編集/きょん
八千代市在住5年の地元密着Webデザイナー&ライター。ADHDとうまく付き合いながら働く幼児2人の母です。
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