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52間の縁側

イベントレポート:みんなの居場所をつくる〜地域に根ざした取りこぼしのない支援を目指して〜

2021年3月下旬に行われたオンラインイベント「みんなの居場所をつくる」。若年性認知症理解促進・普及啓発事業として千葉県若年性認知症専用相談窓口の主催で開催され、「52間の縁側」発起人の2人と建築を担当した山﨑さんがトークセッションを行いました。その内容を一部ご紹介します。

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★プロジェクト「52間の縁側」とは?

「52間の縁側(ごじゅうにけんのえんがわ)」は、「第3のいしいさん家」とNPO法人わっかがタッグを組んで始まった、「高齢者・障がいをもつ人・生きづらさを抱える人・ファミリー・みんなの居場所」を作るプロジェクト。


介護施設としてデイサービス、日中一時支援をするほか、子どもの遊び場、共助カフェ、障がいや生きづらさを抱える人の就職支援など「取りこぼしのない支援」を目指す施設です。


名前は「52間=94m」(1間は1.818m)におよぶ長い縁側の設計から。
プロジェクトについてさらに読む>

52間の縁側の模型。
介護福祉士・ケアマネージャー。
宅老所「いしいさん家」代表。現在は千葉市花見川区と習志野市の2軒運営、新たに千葉県八千代市米本に第3のいしいさん家を建設中。https://www.ishiisanchi.com/
建築家/山﨑健太郎デザインワークショップ代表取締役。
工学院大・東京理科大・早稲田大 非常勤講師、明治大・法政大 兼任講師。「52間の縁側」ではSD Review 2016 入選。ほかたくさんの建築で受賞歴あり。http://ykdw.org/
千葉県八千代市のNPO法人「わっか」理事長。市民間の助け合いシステム「ゆいのわ八千代」の立ち上げ・運営や、ファミリー層向けのイベントなど様々な地域活動を実施。http://wacca-with.org/


分断を作らない支援

宮本 若年性認知症の方をはじめ、多様な方にやさしい地域づくりを推進するために必要だと思うことがありますか?」と、視聴者の方へ事前アンケートにご回答いただきました。一番多かった回答は理解を深めるための「普及啓発」、次いで「居場所づくり」「関係機関の横の連携」でした。

52間の縁側も「若年性認知症の方だけにどうするか」ということではなく、分断を作らない、いろんな人がいても自然と交われるような場所を目指しています。いしいさん家にはすでにいろんな方が来られていますよね。

石井 いしいさん家ではうつ病、統合失調症など色々な人がいます。病名で区切らず、困っている人がいれば一旦来てもらって、そこから考える感じ。

宮本 お子さんもいるのは、最初はスタッフさんの子連れ出勤からですか?

石井 うん、子連れ出勤から。託児もあって「おじいちゃんおばあちゃんと一緒に過ごせる、命の授業をやってるよ」って言うんだけど、なかなか一般的ではないから「赤ちゃんボランティア※」とか色々来てもらえるように工夫してます。
そのパワーアップ、規模を大きくしたバージョンが「52間の縁側」なのかもね。

※赤ちゃんボランティア:赤ちゃんと保護者が「いるだけでボランティアになる」有償ボランティア。

分断を作らない場所を「設計」する難しさ

山﨑 建築の設計って、制度面で面積を区切ったり、防犯とかセキュリティーとか「線を引いて分けていく」のが役割の一つになりますよね。でも石井さんの考えにはそういうところがない。真逆なんですよね。書かなきゃいけない線をどうぼやかしていくか、設計の上ではそこが難しかったです。今はだいぶ線はにじんできたけど。もう話し始めてから5年くらい経つし(笑)

宮本 だからこそ建設が始まる前から地域の人にその話をして、地域がウェルカムになっている部分もあります。どのように建つんだろうって見守ってもらえますよね。

いわゆる「デイサービス」だと親子で遊びに行こう!って感覚はないんだけど、ほんとに行っていいんだという雰囲気が建つ様子から感じ取ってもらえれば。

石井 (米本での)わっかの活動は、ずっとやってるんだもんね。

宮本 そうですね。地域の課題があって、その力になりそうな建物が来て、人も来てくれるというのはみんな待ち望んでる感じかなと思います。

今まで福祉を遠いものとして感じていたような人が若年性認知症などを知るには、知識として教えるのもそうだけど逆に「ただ居心地のいい場所」に行ってたらそういう人がいた、というのがいいのかなと思います。

役割を作るからこその「居場所」

石井 家族によるんだけど、若年性認知症と診断された人って40−50代の働き盛り、大黒柱だったりする。収入が絶たれて、経済面、身体面で家族もとても不安になって、ボロボロ泣く人もいますね。世間的にオープンにしづらい感じもあるし。

そこに「居場所ですよ、ここに同じ環境の人がいますよ」と言っても来づらいところはあって。だから家族でも本人でも、少しでも社会に役割が持てる場所、という意味の居場所も必要かなと思う。バリバリ働いていた頃の収入は難しいかもしれないけど、ここに行けばみんなの役に立てる、って。

山﨑 石井さんのところでは「役割」が自然に起こっている感じですよね。建築の計画をしようと思うと、管理しやすく人の手がかからないように作っていきがちなんだけど、いしいさん家の場合には「人」が役割を担ってくれればそんなに建築は作り込まなくていい。

52間の縁側も、(手入れなどに)手のかかるところがいっぱいあるじゃない。畑とか、大きいお風呂とか、キッチンも。みんなでお手伝いしてもらいながらやっていくんだけど、結果的にはそれが役割であり、居場所になる感じですかね。

52間の縁側のイメージ。

宮本 よく石井さんと「不便を楽しむ」という話をしてますね。

石井 不便さからコミュニケーションが生まれたりね。そうして自然に発生する役割もある一方、今のいしいさん家でやっている感じでは若年性認知症の方は日課があったほうがやりやすいのかなとも思う。なんか(キッチンで)商品を加工して作ったりもしていくんだよね?それに絡めてもいいのかも。

宮本 うんうん。石井さんがそういう目の前の関わりとして支援をしている隣で、わっかがやっていることは未来の資産になるようなことかなと思います。みんなが交わる中で、理解をしていけたらいい。

いろんな人が参加できるような工夫

宮本 これから工事が始まって、だんだん形もできていきます。庭の部分は人の手で竹垣を作ったり、畑をつくったりのワークショップをやっていきたい。

石井 ワクワクしてきたね。

宮本 竹垣も(時間が経って)劣化してきたら、昔の茅葺(かやぶき)の葺き替えみたいにしてみんなで作り直したり。関わりやすいことを色んなところに散りばめて、自分のやりたいところで参加してもらえるといつの間にか居場所になる、ということができるといいな。



山﨑 昔の茅葺の葺き替えって、村の人たちみんなでやるじゃない。あの時代に勝手に村の人が人の家の土間に入ってきちゃったりするのは、たぶん「手伝ったから」なんですよね、自分たちがやったから。ここの竹垣も、みんなに手伝ってもらって。そして「自分が手伝ったから使っていいんだ!」と言ってもらえるといいね。

石井 (来るときの)敷居が低くなるだろうね。

山﨑 皆さん、手伝ったら主張されるといいです。私が作ったんだから!って(笑)

そういう(人の手が入る)ことは今の建築では全くなくしちゃっていることで。「昔の生活、暮らし方を取り戻す」って石井さんもいうけど、この建物の完成までにそれを実践していけるかもね。完成までの進みはとても遅くなるけど、時間がかかったからこそ色んな人が関わることができる。

石井 仕掛け作りね。昔はイベントがなくても生活の中に老いと死があり多世代が一緒にいて、関係がクロスする中で支え合っていけたのかなと思う。自治会の中でおじいちゃんおばあちゃんの中に認知症状の出たひとが出てきたりして、みんなで関わっていけた。

今、人との関係が希薄化していく中で「理解しあおう」とか言っても難しかったりする。「ソーシャルキャピタル※」って言うみたいなんだけど、地域包括とか支援の仕事って「地域の関係を結び再構築すること」かなと僕は思ってます。

※「信頼」や「つきあい・交流」といった人々の関係性が、物的資本などに並び重要な資源であるという考え方。

今わっかが米本団地で関係作りしてるのもこういうことだよね。そういうところに若年性認知症などいろんな方にも信頼してもらって、入ってきていただけるといいかも。

※わっかの活動: 出張八百屋「ヤオマル」や配食サービスのテストでお弁当を配るなど、
  米本の社会福祉協議会や地域包括支援センターと連携した地域活動。

宮本 1人でも、1団体でもできないことがたくさんある。横の連携をとりながらみんなでやっていく、自然とできるような環境を作っていきたいです。

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